敬意もて拍手す 貳

=承前=

『一般文書は勿論、學術的な論文等にもワープロが用ゐられるにつれて、漢字の不足が顯在化した。また字體についても「森■(區+鳥)外(=もりおうぐわい)」の「■(區+鳥)」が正字で出ないとか、「屡」を「屎」」の下に「女」と書くやうな擴張新字體、謂はゆる「朝日文字」に對する批判も高まつた。~中略~ 常用漢字表では略字が「標準字體」であるから、「標準字體」の趣旨が兩者で正反對なのである。國語審議會はこのやうな矛楯を殘した儘、同年末、行政改革により廢止された(平成十二年十二月)』(福田恆存著『私の國語教室(文藝文庫版)』解説にて)※文中■及び()内は小生による。

『抑も、正假名・正字は語の歴史を背負ひ、日本語の基本原理を表現してをり、そのゆゑにこそ、其の歴史と原理の下で言語生活を營む日本人にとつて扱ひ易く、延いては人間の腦を模型化したコンピユーターでも容易に扱へるのである。~中略~ 過去の文獻は、先人の學問的校訂を經て、正假名・正字に統一されて記録されてゐる。それならば今後の文獻も正假名・正字で入力すれば好い筈である。書法が統一されてゐれば、民族の遺産が誰でも自由に活用できるのは勿論、情報處理、特に檢索や分類にどれ程恩惠を齎すか量り知れない。かうした構造的長所を喪失した現代假名遣によるシステムは煩瑣な例外處理で辛うじて實用に堪へてゐるに過ぎず、將來の情報解析の足枷とならう』(同)
 と。

 氏は斯くの如く思ひをもて「契冲」の開發に着手したのであらう。
 それが如何程普及たらしめたか小生には識る由もない。
 しかし、現状を默過せず、一歩前進を行ふに至つた氏の志には敬意を表し度い。
 固より氏の論文には多少の宣傳文句も含まれてゐるかも識れない。
 だが、かうした研究の成果と、普及が商として成立することに何の違和感があらう。
 駄文で綴られる我が機關紙でさへも、少額乍ら、頒價が設定されてゐるのである。

「私の國語教室」(文藝文庫版)の解説で氏は、戰後國語文化の廃頽を憂慮し乍らも、

『しかしその一方で、パソコンを使つて正假名・正字の文章を綴る若い人がインターネットやミニコミ誌に登場し始めてゐる
 と述べてゐることも附記し度い。
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by sousiu | 2010-03-27 16:12 | 日々所感

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