2010年 04月 16日
小生の「振り假名奮鬪記」
ある時、阿形充規先生から
『振り假名を觸つたはうが讀者に對して親切であらう』
と御鞭撻を賜はり、振り假名を觸ることゝした。
ところが困つたことが生じた。考へれば當然のことだが、漢字の振り假名には正統假名遣ひと占領假名遣ひとの相違があるもの尠くない。
阿形先生曰く
『私が教はつた「北原國民學校」(現在の區立北原小學校)では、今のやうな振り假名では無かつた』と。
『例に擧げれば【歡迎】は【かん-げい】ではない。正しくは【くわん-げい】である。
【委員會】は【ゐ-ゐん-くわい】である』と。
・・・・なるほど。正統假名遣ひと正漢字使用に徹底して、振り假名が占領表記では、片手落ちもよいところで、編輯者の識見が疑はれてしまふ。加之、讀者に混亂を及ぼしかねない。
しかしさて、機關紙の締め切りも迫り、今更學ぶだけの時間もない。
固より、どの樣に學べば良いの乎、それすらも小生は識らない。さてゝゝ、如何する乎。
愚考のすゑ、「急がば廻れ」、幸ひにも戰前から溯り明治聖代の書籍を多く寶藏してある爲め、急遽、再び振り假名のある書を讀み漁り、一字々々拾ひ出しては書き留め、拙稿に活用し作業を進めたのである。
この作業を始めてから、殆どの用事を斷わつて、事務所に籠城した。汗。
作成した「虎の卷」の一部がこれ。(下)
いやはや、阿形先生からはえらい難題を賜はつたものだ、と苦心しつゝ、一週間。
遲れながらも機關紙の發行に漕ぎ付けた。
以降、何度か發行を繰り返し、現在に至る。「男子三ヵ月會はずばこれを括目して見よ」。遂に、全て、とまでは云はぬが八割がた、「虎の卷」を頼らずとも振り假名を觸ることが出來るやうになつた。今では宿題を與へてくれた阿形先生に心から感謝してゐる。
最後にひとつ、悔しき思ひを吐露せねばなるまい。
先日の防共新聞社主幹・福田邦宏學兄、微笑して曰く、
『この前、本屋へ行つて辭書を見てゐたらばね、一字々々に正假名で振り假名表記されてゐたんだよ。河原君、識つてた?』と。
小生の兩耳には餘りにも殘酷な言葉であつた。
by sousiu | 2010-04-16 16:01