2011年 08月 02日
スローガン
一方、『戰後體制脱却』『忠孝兩全』『敬神崇祖』等の言葉は、向けられたる先が一般の大衆であつてこそ效果が見込まれる。まあ、一般大衆といふよりも、現在では一層のこと、全國民と云つてしまはう。
前者は必然として政治色を強く帶びてゐる。後者は必ずしもそればかりではない。後者が六ケ敷あるのは、前者が發言者の政治的要求に留まることに對して、後者は先づ自づからそれを實踐してゐなければ單なる言葉遊びに終始してしまひ、荒唐無稽となつてしまふからだ。
よし、極惡非道の徒が聖賢の道を説き、強姦魔が女性の貞操を諭し、天下の大泥棒が少年少女の萬引き行爲を叱咤したとする。一體、耳を貸してくれる御仁の誰れがあらう。
かうした世の中、前者の類ひで云ひたいことは山のやうにある。野生のやうな淺薄な慷慨屋から風呂屋の番頭まで、みな云ひたいことの塵は既に山積してゐるに違ひない。
されど。かういふ時代だからこそ後者の如きスローガンを重要視したい。大衆や全國民には、ほかならぬ、自分も含まれてゐることをゆめ忘れることなく、だ。
それにしても幕末、天下公論となつた『尊皇討幕』の四字。改めて考へると見事だねえ・・・。前者と後者を毫も不自然なく融和させてゐるものなア。然も嫌らしさが全くなく、寧ろ清々しさに溢れてゐる。
今日に最も要せられるべきスローガンは何だらう。
by sousiu | 2011-08-02 10:29 | 日々所感